内田祥哉を誤読する。

レクチャラ:谷繁玲央

日時:2018年6月17日17:00~20:00 @ 東京大学本郷キャンパス工学部1号館3階講評室


『内田祥哉 窓と建築ゼミナール』(鹿島出版会 ,2017)刊行以降、内田祥哉先生のこれまでの設計・研究活動に再び注目が集まっている。この動きは、建築の成立条件自体が揺らぐ中、建築を構法や生産システムに立ち返って再考しようとする方向性と軌を一にしている。

メニカン#08では、主著『建築生産のオープンシステム』をはじめとして内田先生のテクストや設計作品を再読し解釈することで、20世紀-工業化時代の論理をポスト工業化時代の新たな知見として「読み替え」する、あるいは「誤読する」ことを試みた。 内田構法学は、初期のビルディングエレメント論にはじまり、モデュラーコーディネーション、システムズビルディング、木造回帰と、発展していった。最小単位としての部材に始まり、モジュール、生産システム、生産集団、建築職能の伝統と、「建築を成立させるもの」へのまなざしを次々とスケールアップさせていった。常に考察されるのは、フレキシブルでオープンな建築の作られ方である。社会や生産システムとの連関の中で建築が何に縛られ不自由であるか、どうしたら自由になれるかを提示し続けてきたのが内田構法学といえるだろう。

とかく現代-ポスト工業化時代の建築は、不自由である。多様な制約やプロトコルがすでに存在し、大量生産時代の膨大なエネルギーも存在しない中で、建築生産をしなければならない。いまこそ建築の自由さと不自由さ、あるいは建築の「モノ」と「コト」を調停する技法としての構法学を再登板させる必要があるだろう。

文責:谷繁玲央