「多視点アクソメドローイング」と

「ワークショップ的観察」のゆくえ

レクチャラ:板坂留五

日時:2018年3月24日17:00~20:00 @ 東京大学本郷キャンパス工学部1号館3階講評室

メニカン#14では、私(板坂 留五)の個人的な制作とそれらに共通する思考方法「多視点アクソメドローイング」「ワークショップ的観察」を紹介し、参加者とディスカッションを行った。


対象同士の「位置関係」と「影響関係」を同時に描く「多視点アクソメドローイング」については、時間と空間が併置されている点でシザの建築空間との親和性や、ミハエル・バフチンによるポリフォニー論など、多ジャンルの制作論との接続の可能性が垣間見れた。


「ワークショップ的観察」は、制作におけるオブシェクトと設計者の身体の距離の取り方についての仮説として、濱口竜介監督による映画『ハッピーアワー』の演出で行われた手法「サブテキスト・アドリブの廃棄・本読み」をガイドに考察した。

これは、私にとって制作とは、「観察」と「設計」の相互関係であり、「観察」では、サンプリングによって作家性を消していくことに徹底するものの、一方「設計」では、新たな環境や形態を作り出すことに徹底したい、という作家性を軸に背反する二つの行為を含んでいる。一人の建築家が、この二つの行為をパラレルに行うための稽古であると位置付けている。


多視点アクソメドローイングとワークショップ的観察の直接的な関係性は不明瞭だが、モノを形と習慣として捉えている点や、多様なスケールに対応可能な手法であることなどいくつかの共通項が挙げられた。

個人の制作論であると同時に、ひとつの「公共性」のイメージとして共有可能なものになる兆しがみえた。


板坂留五