フォーマリズムからの学び

レクチャラ:星野拓美

日時:2018年2月24日17:00~20:00 @ 東京大学本郷キャンパス工学部1号館2階製図室

発表資料

このレクチャーは、アメリカの建築理論家コーリン・ロウの建築論を起点にして建築におけるフォーマリズムを再考し、それを踏まえて現代日本人建築家の設計論を読み解くものである。レクチャーは大きく三部構成になっている。

第一部では、ロウの建築論の起源に迫った。19世紀ドイツ語圏において誕生したフォーマリズム論は、20世紀にかけて英語圏に持ち込まれることとなった。ロウもこうした流れの中に位置付けられる。

第二部では、ロウと同時代に活躍した美術批評家クレメント・グリーンバーグのフォーマリズム論を比較することで、ロウの建築論の再解釈を試みた。グリーンバーグのフォーマリズム論で述べられる純粋還元は、ただメディウムと同一化するような単純なものではない。グリーンバーグが重視するのは芸術の「質」であり、それは「内容」から生じるものである。グリーンバーグは「質」についての言及を言語化可能な「形式」から志向しているのだ。ロウもまた、語り得ない建築の「質」を志向して「形式」を語っていたと考えられないだろうか。

第三部では、第二部までで再考した建築におけるフォーマリズム論を現代日本人建築家の設計論への照射を試みた。そこで今回は恣意的に坂牛卓『建築の規則』、青木淳「決定ルール、あるいはそのオーバードライブ」、小嶋一浩『小さな矢印の群れ』を取り上げて、参加者とのディスカッションを織り交ぜながら、彼らの設計論を読み解いていった。

果たして現代において建築の「形式」を言及することがどれほど有効性を持つのだろう。まだまだ議論の余地がありそうだが、建築家が形を生み出していることは疑いようのない事実である。この事実を突きつけられた時、語り得ぬ建築の「質」を志向して、語り得る「形式」の言及に徹したフォーマリズム論のストイックな姿勢に学ぶことは少なくない。


テキスト:星野拓美